スピードマスターが手巻きにこだわり続ける理由 | ユニバーサルバリュー中野店ブログ

2021/04/21

スピードマスターが手巻きにこだわり続ける理由

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スピードマスター プロフェッショナルと言えば手巻きであることが特徴です。当時は自動巻きが普及しておらず(特にクロノグラフは)、手巻きにすることが自然だったのでしょうが、その伝統を今に受け継ぎ手巻きにこだわり続けています。スピードマスターを語る上で欠かすことのできないムーブメントは3つです。

Cal.321

初代スピードマスター~第4世代モデルに搭載。
NASAのテストに合格し宇宙計画における正式装備品となったスピードマスターに採用されていたのがこのムーブメントです。
1942年に登場したオメガの「Cal.27 CHRO C12」をベースとして開発されたムーブメントです。そしてそのキャリバーのベースとなっていたのが、当時オメガと同じグループの企業だったレマニア社のものです。 このレマニア社のキャリバーは後にレマニア Cal. 2310として有名になっています。ヴァシュロンコンスタンタン、ブレゲ、パテックフィリップ等でもベースとして採用されています。
1969年、人類が初めて月に降り立ったときは丁度ムーブメントが切り替わる過渡期。月に行ったのはCal.321だったのかCal.861だったのか論争がありましたが、現在はCal.321だったことが分かっています。

オメガのムーブメントCal.861

Cal.861

1968年登場。第5世代のスピードマスター プロフェッショナルに搭載。名機Cal.321とはクロノグラフの制御方法が変更された他、振動数を18,000から21,600振動へ上げ高精度化されました。基本設計はそのままに簡略できる点は簡略化し故障が起こりにくくした点も、長く使用されることに繋がったのでしょう。
年代によってメッキが異なっていることも特徴です。
初期、銅色メッキ オメガのムーブメントCal.861
後期、金色メッキ オメガのムーブメントCal.861金メッキ

Cal.1861

1996年登場。第6世代~第7世代のスピードマスター プロフェッショナルに搭載。名称から分かるようにCal.861の改良版で、変更点はメッキ処理がロジウムに変わっただけです。
オメガのムーブメントCal.1861
この3世代に渡るムーブメントがスピードマスターの心臓部を支え続けました。
上記のようにCal.861とCal.1861がメッキ処理の違いだけで事実上同じムーブメントであると考えると、50年以上も変わっていません。
元になったCal.27 CHRO C12から数えると実に80年近くも使われています。

それでは何故オメガはムーブメントの変更を行わなかったのでしょうか。

上述の通りCal.861はCal.321を改良したムーブメントですが、あえて構造を簡略化しています。複雑化し高級ムーブメントであることをアピールするメーカーが数多く存在するでしょうが、シンプルであることを選んでいます。
これこそがオメガが目指したものだったのではないでしょうか。
手巻きだからローターは不要。最も重く、大きく動く部品が元々不要です。当然シンプルなものの方が壊れにくくなります。丈夫で壊れにくく、メンテナンスも容易にできるムーブメントを変える必要があるでしょうか。実際、Cal.861からCal.1861へのメッキ処理方法の変更は、耐食性・耐摩耗性を向上させたのみです。

そう、スピードマスターの手巻きムーブメントは変える必要がなかったのです。

今後の手巻きスピードマスター

2019年、衝撃的なニュースがリリースされました。
Cal.1861が生産終了となり、新たなムーブメントが登場しました。手巻きムーブメントをコーアクシャル化したCal.3861です。このムーブメントが初めて搭載されたのは、スピードマスター アポロ11号 50周年記念限定モデルです。月に行ってから50年目の節目の年に手巻きムーブメントも進化を遂げたのです。
また、2020年には初代ムーブメントCal.321を当時の仕様のまま復刻させました。

伝統と進化を融合させた、今後のオメガに注目です。