スピードマスター NASAの過酷な11項目のテスト | ユニバーサルバリュー中野店ブログ

2021/05/19

スピードマスター NASAの過酷な11項目のテスト

出典 オメガオフィシャルサイト

スピードマスターが選ばれた経緯には、NASAの過酷な11項目にも及ぶテストをクリアしたからこそ、オフィシャルウォッチとして採用となりました。
その過酷な11項目とはどんなテストだったのでしょうか?
その前に、テストを受けられる時計の8の条件がNASAから提示されました。 この条件をクリアしなければ、もちろんテストにも進めません。 宇宙計画という壮大なプロジェクトで使用されるものですので、厳しい条件と過酷なテストがあるのは必然です。 まずは、テストを受けられる時計の条件から見ていきたいと思います。

【条件】

1.24時間の誤差が±5秒未満であること(±2秒未満が望ましい)
2.クロノグラフ(秒、30分、12時間の積算計)であること。
3.ステンレススチール(サテンケース)であること。
4.ダイヤルは黒もしくは白(視認性の良いもの)が望ましい。
5.機械式(手巻きもしくは自動巻き)マニュアルで巻き上げが出来ること。
6.気圧差に強いこと。
7.耐衝撃性、防水性があり、クリスタルが粉々に粉砕しないこと。
8.時計に信頼性があること。
この条件をクリアするだけでも当時はかなりハードルが高かったのではないでしょうか…
そして、ここからが過酷なNASAが行ったテストの内容です。

【11項目のテスト】

3513.50 出典 オメガオフィシャルサイト

1.【高温環境】
検査装置内の温度を70℃に設定、時計を48時間放置する。
その後、装置内の温度を室温に戻し、時計が正しく作動するかをチェック。
さらに内部を93℃に上げ、そこから30分時計を放置し、再度チェック。
装置内の気圧はほぼ真空状態に保つ。

2.【低温環境】
検査装置内に時計を入れて、内部の温度をー18℃に設定し、4時間放置する。
その後、装置内の温度を室温に戻し、時計の作動チェック。
装置内の気圧はほぼ真空状態にし、相対湿度はー15%以下に保つ。

3.【気圧&気温】
時計を装置内にセットし、内部を真空状態に設定。
内部の温度を70℃からー18℃に下げ、時計を45分放置。
再び内部の温度を70℃に上げ、45分放置。
このセットを1セットとし、15回繰り返す。
その後、装置内を室温に戻し、時計の作動チェックを行う。

4.【相対温度】
20℃~38℃の蒸気が吹き抜ける検査装置内に、蒸気を入れながら2時間かけて温度を70℃に上げ、時計を6時間放置。
その後、16時間もの時間をかけて温度を元に戻し、時計の作動チェックを行う。
装置内の相対温度は95%以上に保つ。

5.【酸素中気圧】
酸素100%、0.35気圧、気温70℃に設定された室内に時計を放置。
その間、明らかな燃焼、有毒ガスや不快な臭いの発生、結合部分や潤滑油の劣化が見られた場合、その時計は不合格となる。

6.【衝撃】
時計を検査装置に入れ、着陸時の衝撃を想定し、時計に40Gの負荷を1000分の11秒、繰り返し6回かけていく。
これを6姿勢ごと1回ずつ行い、その後、正しく作動するかをチェック。

7.【加速度】
時計を検査装置内に入れ、333秒間の間に重力が1Gから7.5Gになるまで加速する。
その後、重力が16Gになるまでさらに加速。
これを3方向から1回ずつ行い、その後、作動具合のチェックを行う。

8.【減圧】
検査装置内を0.35気圧に設定し、温度を70℃に上げ、時計を1.5時間放置する。
さらに装置内の温度を93℃まで上げて、時計を30分放置する。
この後、正しく作動するかチェックを行う。

9.【高圧】
検査装置内を1.6気圧に設定し、時計を最低1時間以上放置する。
その後、高圧環境により時計に不具合や破損個所が出ていないかを入念にチェック、最後に正常に作動するかチェックする。

10.【振動】
時計を検査装置内に固定し5~2000HZまでの間で振動数を変更しながら30分間にわたり振動を与える。
この内容で時計を垂直・側面・並行など、6姿勢ごとに1回ずつ検査を行い、その後作動をチェックする。

11.【可聴音】
検査装置内に時計を入れ、40~1000HZの振動数の幅で、130デシベルのノイズを当てていく。
これを垂直・側面・並行の計6姿勢ごとに10分ずつ行う。
そして、検査終了後、時計が正しく作動するかチェックする。

どうでしょうか。 非常に過酷なテストですね! この過酷なテストで最後まで動いたのがオメガのスピードマスターでした。
3513.50 出典 オメガオフィシャルサイト

テストの結果は以下の通りです。
【オメガ】減圧テスト中に21分進み、加速度テスト中に15分の遅れが生じる。
テスト中にダイヤルの蛍光塗料がその役目を果たさなくなった。
【ロレックス】相対温度テスト中に2度時計が止まった。
高温テスト中に秒針がしなり、他の針までもがダイヤルに引っかかり止まってしまった。
それ以上ロレックスのテストは実施せず。
【ロンジン】高温テスト中に時計のガラスが歪み外れてしまった。
減圧テスト中にも同じ不具合が生じたため、ここでテスト実施は終了となる。

ちなみに、ロレックスのデイトナは正式名が『コスモグラフ デイトナ』となっていますが、この宇宙を連想させる「コスモグラフ」というネーミングからもNASAにオフィシャルウォッチとして採用してもらいたかったのでは?ということがよく言われていますね。
この過酷なテストをクリアした「スピードマスター」は実用時計として最強なのではないでしょうか。 時計という小さな世界の中に、溢れんばかりのストーリーとロマンが詰まっている「スピードマスター」に憧れる方が世界中にいるのも納得ですね!