ムーンウォッチ-こうしてスピードマスターは月へ降り立った | ユニバーサルバリュー中野店ブログ

2021/03/21

ムーンウォッチ-こうしてスピードマスターは月へ降り立った

出典 NASAオフィシャルサイト

これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である。という有名なセリフは、1969年7月16日に人類として初めて月に降り立ったニール・アームストロング船長が残したものです。当時、宇宙計画は急ピッチで進められており、それはアメリカvsソ連という構図の科学技術の競争だったのです。

ロレックスも切望した、宇宙へ

アポロ計画にNASAが採用する時計は何になるか。その座を是が非でも獲得したかった有名な時計があります。ロレックスの「コスモグラフ」です。 今となっては「デイトナ」の呼び名が完全に定着していますが、文字盤に記されたコスモグラフの文字こそ、ロレックスが宇宙へ行くことを願った痕跡です。

アポロ計画における正式装備品として様々な時計に厳しいテストを行います。そのすべての項目に合格した唯一の時計をNASAは採用します。それがスピードマスターです。 アメリカによる宇宙開発なのだからアメリカ製の時計を採用すべきではないかという意見はだいぶ上がったようです。しかしNASAが採用するのはあくまで優れた時計。乗組員の命がかかっているのです。

1965年、スピードマスターの第3世代Ref.105.003がNASAのテストに合格し、1969年のアポロ11号による人類初の月面着陸に同行したのがRef.105.012です。「人類にとって偉大な一歩」を踏み出したとき、スピードマスターは「ムーンウォッチ」となりました。105.003と105.012の違いは、ケース径がそれまでの38mmから42mmとなり、破損を防ぐためのリューズガードが付き、文字盤に「PROFESSIONAL」と入れられました。
このRef.105.012の登場以来、現在へと受け継がれていくスピードマスター プロフェッショナルの姿が完成しました。

全てが必要スペック


手巻きであること
現在の機械式時計の多くが自動巻き機構を採用していますが、無重力空間では自動巻きは機能しません。ローターを回すための重力がないからです。
NASAが求めた条件は、自動巻き・手巻き・電池駆動は問いませんでしたが手動で巻き上げが出来ることが出来ないと不可。もっとも、当時の腕時計は元々ほとんどが手巻きだったのですが。

プラスチック風防であること
宇宙船の中ではどんなトラブルが起こるか分かりません。もし風防が割れてしまうようなことが起こった際に、ガラスの破片が船内に飛び散ってしまうといけません。そのためNASAは砕け散らない風防を求めました。 ガラスに比べて傷は付きやすいものの割れにくい特性を持ったプラスチック風防がその条件を満たし、今でもスピードマスターの伝統として受け継がれています。

クロノグラフであること
時間を知る以外にも、計測器として時計は必要になります。
1970年、アポロ13号は事故に見舞われます。地球から遠く離れた宇宙空間で酸素タンクが爆発し、月面着陸を断念し帰還することになりました。 地球の大気圏突入時に、電力が使えない中正確にエンジンを14秒間噴射する必要があります。この14秒間を正確に計測したのがスピードマスターです。

月面へ


1969年7月20日、人類初の月面着陸がアポロ11号によって果たされました。ニール・アームストロング船長が使用していたスピードマスター 105.012がムーンウォッチになって瞬間でもあります。ちなみに司令船パイロットのマイケル・コリンズは145.012を使用していたそうですが、このときは月面に降りてはいません。月面歩行を行った史上2番目の人であるバズ・オルドリンがどちらを使用していたかはわかっていないそうです。

宇宙計画と長きにわたって関わってきたスピードマスター。
現在でも裏蓋にはその事実が誇らしげに記されています。

THE FIRST WATCH WORN ON THE MOON ムーンウォッチ