コーアクシャルとマスター クロノメーター | ユニバーサルバリュー中野店ブログ

2021/05/20

コーアクシャルとマスター クロノメーター

近年のオメガではモデル名に「コーアクシャル(Co-Axial)」と付いたものがほとんどです。1999年にオメガが量産化に成功したこの機構は、壊れにくく長持ちする画期的なムーブメントですが、いったい何がそんなに凄いのでしょうか。

コーアクシャルの発明

そもそもコーアクシャル機構はオメガが発明したものではありません。発明者はイギリスの独立時計師、ジョージ・ダニエルズ博士。1978年に発明されました。 正式名称は「コーアクシャル・エスケープメント」です。コーアクシャルとは「同軸」という意味。エスケープメントは脱進機のことです。通常の脱進機に比べ歯車が2枚追加され、その2枚が同軸上にあることが名前の由来になっています。コーアクシャル脱進機のメリットはパーツの摩耗が少なく、注油をほぼ必要としていないこと。そのためオーバーホールを必要とする周期を長くとることができ、費用を抑えることができます。 ただし構造は複雑になります。博士もこの脱進機を量産・製造するには大手メーカーの技術が必要と考えますが、ロレックスやパテックフィリップでは断られたようです。 結果、スウォッチグループが開発に着手することになります。オメガが所属するスウォッチグループには、ムーブメントメーカーとして実績のあるETA社があります。こうした経緯でオメガがコーアクシャル機構を搭載することになりました。
オメガのコーアクシャルムーブメント 出典 オメガオフィシャルサイト
ジョージ・ダニエルズ博士は1980年にコーアクシャル・エスケープメントの特許も取得していますが、すでに有効期限は過ぎております。つまり今となっては誰でもコーアクシャル機構を搭載して問題ありません。それでもコーアクシャル機構を搭載する時計はオメガだけです。

耐磁性

オメガのコーアクシャルムーブメントのもう一つの特徴は、耐磁性の高さです。
ひげゼンマイとテンプは磁気帯びしないシリコン製に、他の部品にも非磁性合金のニヴァガウスやアモルファス合金を使用しています。コーアクシャルムーブメントを進化させ、これからの時代に高い耐磁性が必要と考えたオメガは新しい制度を作りました。

マスター クロノメーター

2015年、オメガはスイス連邦計量・認定局(METAS)と共同で新たな制度を制定しました。それがマスター クロノメーターです。 この認定を受けるには2度のテストをクリアしなければなりません。スイス連邦計量・認定局(METAS)によるテストを受け、さらにMETASによる8つのテストをクリアしなければなりません。ここで最も力を入れているのが耐磁性です。 このテストに合格するには1万5000ガウスという強力な磁場下でも制度を保っている必要があります。これは医療設備のMRIの中でも制度を保てるというスペックです。 METASによるテストは以下のような項目です。

テスト1
高磁場下でのムーブメントの機能
1万5000ガウスの高磁場下にムーブメントをさらし、正常に機能することを確認します。

テスト2
高磁場下での時計の機能
ムーブメントのテストが完了したら、実際に時計に組み込んだ状態で高磁場下にさらし同様のテストを行います。

テスト3
帯磁と消磁
時計を高磁場下にさらし帯磁させた後に2日間のテストを行います。1日目は24時間6姿勢による精度のテストを行います。2日目も同じテストを行います。ただし今度は時計を消磁した状態です。2日間のテストを終えたら、帯磁状態と消磁状態での差異を算出し制度に影響がないことを確認します。

テスト4
時間の経過に左右されない精度
手首に付けた状態を想定し、14時間、33℃で、3時間毎に姿勢を変更。手首から外した状態を想定し、10時間、23℃、5時間毎に姿勢を変更。この24時間のテストを4サイクル行います。(テスト3の工程はこの中に組み込まれています)

テスト5
6姿勢における制度誤差
時計を60秒毎に、6つの姿勢に変えながら、制度の確認をします。

テスト6
等時性
パワーリザーブが100%になるまで巻き上げ、6姿勢での精度を確認します。そのまま時計を動作させ続けパワーリザーブが33%になるのを待ち、もう1度6姿勢での精度を確認します。100%時と33%時の平均制度の差異が基準内であることを確認します。

テスト7
パワーリザーブテスト
パワーリザーブ100%まで時計を巻き上げ、そのまま所定のパワーリザーブいっぱいまで動作させ続けた後に電波時計との差異を確認します。パワーリザーブの限界いっぱいまで正確に機能し続けていることを確認します。

テスト8
防水性能
加圧した水槽に時計を約2時間沈め、水圧を0からその時計の最大耐水圧まで上げていきます。次に時計を取り出し50℃まで加熱します。次に時計の風防に冷水を1滴落とします。内側に水滴が現れたら基準を満たせていないと判断します。
オメガのムーブメント 出典 オメガオフィシャルサイト
様々な状況下でのチェックが行われている。さらには自分の時計のテスト結果をオメガのサイト内で確認することもできる。

これからの機械式時計

メンテナンスを必要としている時計の多くは磁気帯びをしてしまっていると言われています。パソコンやスマートファン、バッグの留め金の磁石、あらゆるところに磁気が存在する現代社会において、耐磁性とはもはや防水と同じぐらい必要スペックでしょう。壊れにくいムーブメント「コーアクシャル」に高い耐磁性を求めたオメガは確実に未来を見据えているのでしょう。